公益社団法人 奈良まちづくりセンター 理事長 二十軒 起夫さん インタビュー

古都・奈良の貴重な風情を残す「奈良まちづくりセンター」

奈良の風土や街並みの保存と、それらを活かした地域振興活動を通して新しい「ふるさと奈良」の創生を目指す「奈良まちづくりセンター」。現在は会員は約100名、その内の20名程のメンバーが中心となり運営を担っている。理事長を務める二十軒起夫さんに、現在の活動状況や奈良という街の魅力について話を伺った。

街のために市民が立ち上がった

理事長 二十軒起夫さん
理事長 二十軒起夫さん

――まずは「奈良まちづくりセンター」の立ち上げの経緯について教えてください。

現在は社団法人ですが、もとは1979(昭和54)年に市民団体、今でいうところのNPOとして発足しました。その当時、奈良町を分断する広い都市計画道路の工事が決定したんです。古い町家が壊されて、街の雰囲気が大きく変わることに反対運動が起こりました。結局、道路は完成しましたが、それをきっかけとして、奈良町の歴史や文化を調査研究する動きが始まりました。

奈良といえば、まず飛鳥時代や奈良時代など古代の時代を思い浮かべることが多いと思いますが、江戸時代以降もよい歴史があります。例えば、「ならまち」は、もともと「元興寺」という古い寺の境内が発展した場所で、街並みがいい。ですから、奈良町の街並みの歴史的意義を、全国に広めていくことにしたのです。その後、1988(昭和63)年に奈良公園周辺と平城宮跡で開催された大型イベント「ならシルクロード博」の頃には、奈良市からも街並み保存を目的とする補助金が出るようになりました。とても注目を集めるようになったんです。

――行政と連携をとるようになり、どう変化しましたか。

奈良町の中にいろいろな施設ができましたね。例えば、当センターが管理運営している「奈良町にぎわいの家」です。ここは今から3年ほど前に売りに出されていた大きな町家でした。放っておいたら別の施設が建ちそうだったので、奈良市が買収しました。それを1年かけて修復し、展示館にしたのです。同様に「ならまち格子の家」や「入江泰吉記念奈良市写真美術館」も奈良市が手掛けています。

奈良の景観保全を目的に、まちづくりの推進や交流、支援事業を行っている
奈良の景観保全を目的に、まちづくりの推進や交流、支援事業を行っている

そして、奈良市が奈良町の整備を始めてから、今度は若い人が古い町家を借りる流れが起こりました。実は市がリードしたわけではなく、自然発生だったんです。昔から観光地として栄えていた「東大寺」や「春日大社」に近いこともあり、「町家を借りて自分たちなりの、小さな商売をしよう」という人が増えたんだと思います。町家の建物を活かしたおしゃれな雑貨店やレストラン、カフェといった店が増えました。
建物は何もしないで放っておくと傷みます。誰かが住むなどして活用することが建物の保存にとっては大事です。

町家の活かし方について話す二十軒さん
町家の活かし方について話す二十軒さん

――「ならまち」は面白い店が増えて、今は観光客の方が多く訪れていますね。

修学旅行や遠足で一度は奈良に来るかと思います。その時は、「東大寺で大仏を見る」や「奈良公園で鹿と遊ぶ」だけになりがちですよね。その後、また来るとき「今度はもっと別の奈良を知りたい」と思われて、その一つとして違う顔の「ならまち」が注目されるのだと思います。街並みもいいですし、個性的なお店が多いですからね。

国内外で多岐にわたる活動

奈良まちづくりセンター
奈良まちづくりセンター

――「奈良まちづくりセンター」の現在の活動内容について教えてください。

主に奈良の景観保全を目的に、まちづくりの推進や交流、支援といった事業を行っています。例えば、学生や若い人を対象に、奈良町を一つのキャンパスに見立てた勉強会を開いたり、1917(大正6)年に建てられた町家を利用した展示館「奈良町にぎわいの家」の管理運営をしたりしています。昔ながらの生活や知恵を展示しているだけでなく、講座やコンサート、落語などのイベントが行われています。

特徴的なのは外国、特にアジアのまちづくり団体と積極的に交流していることでしょうか。街並み保存などについて考える国際シンポジウムを企画していて、最近では今年2016(平成28)年の1月に、インドネシアのバリ島で開催しました。13ヶ国から計131名が参加し、活動指針を宣言しました。来年2017(平成29)年は奈良で開催する予定です。シンポジウム以外にも研修の講師を務めたり、古い家の改修相談に乗ったり、様々な活動で交流を深めています。

ワークショップもたびたび開催される
ワークショップもたびたび開催される

――「奈良まちづくりセンター」は「奈良町物語館」の中にありますが、この建物自体を地域活性化などに役立てることはありますか?

「奈良町物語館」の建物はもとは明治時代の町家で、国から出た補助金を使い、今から20年前に改修しました。現在は1階を、一般の方が手作りの作品を発表できる場にしています。展示物は焼き物や家具、手芸作品など様々で、プロの方のレベルの高い作品が登場することもあります。この展示に刺激を受けている人も多いと思いますよ。また、子ども向けに、敷地内の井戸で水を汲み、かまどでご飯を炊く体験型のワークショップを開催しています。古い物のよさや、昔の生活を知ってもらえます。今の子どもたちには、なかなかできない経験だと思います。

「奈良町物語館」で開催されるワークショップでは、井戸の水汲み体験ができる
「奈良町物語館」で開催されるワークショップでは、井戸の水汲み体験ができる

落ち着いた暮らしができる「大森町」

――奈良町に近い大森町の魅力について教えてもらえませんか。

大森町はいわゆる奈良町の中心ゾーンからは、少し外れた場所に位置しています。奈良全体は観光地としてにぎわっている街ですが、大森町は奈良の旧市街の中では比較的、昔から存在する静かで落ち着いた住宅地ですね。戦災被害がなかった場所なので、「ならまち」ほど多くはないですが、昭和初期のものと思われる建物がしっかりと残っています。そんな街並みを見て、「昭和レトロの懐かしい雰囲気やな」と言うかたもいらっしゃいますね。

落ち着いた和やかな街
落ち着いた和やかな街

昔ながらの様子も残っているんですが、大森町は区画整理により、新しく住宅地になってきた場所もあります。最寄りのJR「奈良」駅まで徒歩で10分ぐらいととても交通の便がいい。近鉄「奈良」駅までも十分歩ける距離です。それに、市内循環のバスが走っていて、大森町にもバス停があり便利です。このバスだと「奈良県庁」の方まで楽に行けますね。この辺りは地元の人向けの小さな店はいくつもありますが、観光客が入ってくる場所ではないので、観光地の中にあるにもかかわらず、暮らしやすく魅力的な場所だと思いますよ。

――古都・奈良に住むことの魅力についてはいかがでしょう。

身近なところに文化財があり、美術が好きな方にはいいでしょうね。お寺も近く、年中行事を味わえます。私が思うに、奈良はアジア各地から伝わった文化が完全に溶けあうことなく、それぞれ別に存在している街です。京都のように一度、昇華されて日本文化の形になるのではなく、生(き)のままです。曼荼羅のように遠くから見ると一つに見えますが、近くで見るとそれぞれが全然違っていて、それが奈良の文化の面白さです。また、イベントが多く、昔からの伝統的なイベントだけでなく、現代的なイベントも多いので、それも楽しいでしょうね。

奈良まちづくりセンター 二十軒さん
奈良まちづくりセンター 二十軒さん

公益社団法人 奈良まちづくりセンター

理事長 二十軒 起夫さん
所在地 :奈良県奈良市中新屋町2-1 奈良町物語館内
TEL:0742-26-3476
URL:http://www4.kcn.ne.jp/~nmc/
※この情報は2016(平成28)年9月時点のものです。