スペシャルインタビュー

教師が生徒を理解し、生徒は自信を持つ。芯のある教育に励む「奈良市立春日中学校」

2016(平成28)年に創立70周年を迎えた「奈良市立春日中学校」は、奈良市の中で最も長い歴史を持つ中学校だ。豊かな心と社会性を育むことを目標に、特色豊かな教育システムを取り入れている。そんな生徒に寄り添った教育を目指す「奈良市立春日中学校」で2015(平成27)年4月から校長を務めている田町勝美先生に話を伺った。

生徒に心を開いてもらうには、同じ目線で話し、長所を見つけること

「奈良市立春日中学校」の田町勝美校長先生
「奈良市立春日中学校」の田町勝美校長先生

――はじめに春日中学校の沿革について教えてください。

田町校長:創立は1947(昭和22)年です。生徒数が577名、教員数が17名の規模でスタートしました。そして、1978(昭和53)年には大人の方などを対象にした夜間学級を開設。1984(昭和59)年には「奈良市立飛鳥中学校」が分離しました。現在は全21クラスで、555名の生徒が学んでいます。 目標を持ち、自ら積極的に課題に取り組む「自主」、心のこもった挨拶ができ、自他を大切にする思いやりを持つ「誠実」、健康な体で自ら人のために尽くす「奉仕」、これら3つの校訓に基づいた教育を行っています。

歴史ある奈良市立春日中学校
歴史ある奈良市立春日中学校

――目指す教育について具体的に教えてください。

田町校長:まず、教師については、生徒を理解し、信頼関係を築くことが大事です。子どものよさを見つけることなく、技術だけを教えようとする教師は、授業に限らず部活指導など何をさせても上手くいきません。

そして子どものよさを見つけるためには、子どもの目線に自分を合わせることです。公立の中学校は、いろいろな生徒が集まってきます。家庭環境に恵まれている生徒もいれば、そうでない生徒もいます。また、集団になじめない生徒もいます。ですから、各生徒の事情に合わせて、すぐに話ができる能力が教師には必要です。そうして個々の気持ちを聞き出して、アドバイスできる教師は生徒から好かれますね。

活発な生徒たち
活発な生徒たち

――それぞれの子どものよさを見つける教育は、どのような結果につながりますか。

田町校長:人間はけなされるよりも褒められたほうが絶対に気分がいい。けなされることがやる気につながる人もいますが、今の子ども達はそうではありません。その子のよさを見つけて褒めてあげることで自信が付き、「また頑張ろう」とやる気が起こります。親や教師は子どもの悪い面ばかりが目に付きがちですが、反省だけをさせようとしても卑屈になるだけ。ヤンチャな子でも、よい面を見つけますよ!

――では生徒にはどのように成長して欲しいですか。

田町校長:今は本校のある奈良に限らず、日本全体で、「指示待ち姿勢」の若い人が多いと思います。ですから、人に言われる前に自分で「今はこれが必要だ」と考えて、自主的に動ける人間に成長してほしいですね。といっても最初からは無理なので、ある程度の基本を教えて、その後は自ら動けるように指導しています。

自主性をもって、過ごす学校生活
自主性をもって、過ごす学校生活

指導の中で、一番驚いているのが全校集会です。本校では月に一度、全校集会を行っていますが、その時に生徒たちは各教室から二列になり、スーッと静かに体育館に入っていきます。最初に教師が基本を教えて、その後は生徒自身に引率させますが、とても落ち着いているんです。

――規律正しい生徒さんたちですね。

田町校長:はい。そのしっかりとした姿には、来客者もビックリしていますね。

情報発信で学校のイメージを改善

「自ら伸びていこうとする児童生徒の育成」
「自ら伸びていこうとする児童生徒の育成」

――奈良市は全体的に小中一貫教育を導入していますが。

田町校長:「自ら伸びていこうとする児童生徒の育成」というテーマを掲げ、本校と近隣の3つの小学校が連携しています。それぞれの学校の教師たちは合同研修などの交流を通して、できるだけ生徒に関する情報を共有することを心がけています。

以前であれば小学校の教師が「中学校の先生に伝えると、先入観を持たれるかもしれない」と考えてしまい、あえて言わなかった情報も、今はこちらを信じてたくさん話してくれるようになりました。子ども同士でいじめの関係があった場合など、トラブルに発展する前に対処しやすくなります。それに、中学校に進学するときに不安を抱える「中1ギャップ」という言葉もありますし、子どもたちの緊張を少しでも取り除くことが大事です。

地域一体の教育が子どもの成長につながる
地域一体の教育が子どもの成長につながる

――「奈良市立春日中学校」のホームページはかなり内容が充実していますよね。

田町校長:ホームページを活用して「学校の見える化」を進めているんです。本校のホームページは、全て私が記事を書いています。以前、他の中学校に赴任した時のことですが、事前に周囲から「とても荒れた学校だ」と聞かされていたんです。でも、実際に行くと全く違って、周囲に誤解されていたのです。その時に、学校のホームページを通して情報を発信していくことを考えました。ホームページ作成マニュアル本を片手に、最初は失敗もしましたが、内容をどんどん充実させていきました。結果、学校の中が見えるようになり、生徒の、そして学校の評価が上がったのです。その経験を本校でも活かそうと思いました。

行事や活動、学校評価も公開している
行事や活動、学校評価も公開している

――反響はいかがですか。

田町校長:アクセス数で反響がわかりますね。私が手を加えるまでは、平均して1日に40アクセス程度でしたが、今は300を超えています。みなさんの口コミで増えたのだと思います。特に授業や行事の様子を紹介した記事は、保護者の方に人気が高いですね。

ホームページを作るときは、「内容を充実させる」「毎日更新する」「写真をできるだけリアルタイムで掲載する」これらを念頭に置いています。情報発信を始めてから、学校評価などで肯定的な意見の割合がすごく増えました。保護者の方だけでなく、周辺地域の方にも学校について理解を深めてもらえるのがよかったと思います。

内容が充実していてアクセス数も増えている
内容が充実していてアクセス数も増えている

暮らしやすく地域のつながりも強い街

――大森町などの学校周辺はどのような地域だと思われますか。

田町校長:この辺りの地域は駅がわりと近く、店や病院が多いことが大きな魅力だと思います。大森町付近は車でも入りやすい飲食店などが多く、さらに徒歩10分位で着くJR「奈良」駅のそばには、三条通という賑やかな場所があります。飲食の場に不自由しないし、スーパーや銀行にも行きやすいですね。バスも走っているし、交通の便にも恵まれていて、便利に暮らせる街です。

また、地域のつながりも強い街だと思います。小中学校の教師と地域の方が集まって、学校関係の課題について話し合う「地域別懇談会」を年に3回開催していますが、総計で100回を超えました。私は以前、春日中学校に勤め、その後他校に赴任し、再び戻ってきたんです。だからこそわかるんですが、昔に比べて地域の「一致団結」のムードが高まっていると感じます。

生徒にも地域の人にも暮らしやすい街へ
生徒にも地域の人にも暮らしやすい街へ

――利便性やつながり以外にもいろいろな良さがありそうですね。

田町校長:私自身はここから車で20分ほどの街に住んでいて、そこも暮らしやすいんですが、大森町は暮らしやすさに加え世界遺産がそばにあります。「東大寺」や「春日大社」、「興福寺」などの歴史に触れられる場所に徒歩で行けます。こうした歴史遺産に近い環境下だと、子どもたちの学習の機会も増えるのではないでしょうか。

――ではもう少しエリアを広げて、奈良という場所の魅力を教えてください。

田町校長:東京や大阪に行くことがあるんですが、奈良に帰ってくるとホッとします。水や空気が美味しいし、街が静かです。あと、災害が少ない点も奈良のよさですね。台風は直撃する予報でも、避けることが多い。西大寺や大森町など山がない平地の場所は土砂災害にも見舞われません。さすが、かつて都が置かれていた場所です。生まれてこのかた、大学時代を除いてずっと奈良で暮らしていますが、生活を営むには最高の場所だと思います。そして教育にもいい環境だと思います。

奈良市立春日中学校校長 田町勝美さん インタビュー
奈良市立春日中学校校長 田町勝美さん インタビュー

奈良市立春日中学校

校長 田町勝美 先生
所在地 :奈良市西木辻町67
TEL :0742-61-7071
URL:http://www.naracity.ed.jp/kasuga-j/
※この情報は2016(平成28)年9月時点のものです。